Vol.11 山崎 正明さん「アルテピアッツァ美唄で美術教育の全国大会」

「アルテピアッツァ美唄で美術教育の全国大会」

美術による学び研究会事務局 山崎正明(千歳市立北斗中学校教諭)

 2009年7月末、全国から熱意あふれる美術教師110人がアルテピアッツァ美唄に集まりました。「美術による学び研究会」(代表上野行一高知大学教授)のはじめての「全国大会」でした。事務局である私は研究会の開催地として多 くの美術教師が憧れている「アルテピアッツァ美唄」を選ばさせていただきました。
 ところで、みなさんは小中学校の図工や美術の時間をどう捉えておられるでしょう。ややもすると立派な作品をつくらせるためのものになったり、趣味の延長や得意な子が楽しむ時間になってしまったり、「鑑賞」の時間が感じる喜 びより知識中心になってしまったり…。
 しかし、美術教育で大事にしなければならないことは、立派な作品をどのようにつくらせるかということよりも、描いたりつくったり見たりすることを通してどのような心や力を育むかということです。ですから美術教育を通して子 どもの学びについて真剣に考えていくことが必要です。こうした背景から生まれたのが「美術による学び研究会」です。
 私は、アルテピアッツァ美唄で行われている「こころを彫る授業」と「美術による学び研究会」のめざすものは重なっている部分が多いと思っています。
 それは、この「こころを彫る授業」が美しい作品をつくるための時間ではなく、自分自身の「こころ」との対話の時間を大事にしているという理由からも明らかです。
 そして私が実際に授業を参観させていただいたときのこと、安田侃さんは「自分って何なのか、考えながら…考える手段が石であって、手であって…」と参加者に投げかけておられました。私には参加されているみなさんが思い思いに石に向かっている様子が何かとても素敵で貴重な時間に感じました。
 さて、研究会の数か月前、安田侃さんの美術教育へのエールとも思えるような内容の講演会がありました。若い頃のお話からはじまってイタリアのお話しになりました。イタリアでは今のような苦しい経済状況になってから、かえって美術館の入場者数が増えたり、本が売れだしたりしているそうです。「こんなときこそ文化の火を消してはいけない」という考えのもと経済的に苦しいながらも企業などが、芸術活動を活性化させる様々な取り組みをしているとのことでした。
 講演が終わってから、研究会の開催のことで挨拶にいきますと、安田侃さんは「美術教育は文化を残すということでは最先端ですね」「この空間でやってくれるんですね」と笑顔で話されました。とても心強く感じました。
 そして迎えた研究会。全国から集まった教師達が、ゆったりとした時間と空間の中でこれからの美術教育をどうしていくかについてじっくりと考えました。その在り方はアルテピアッツァ美唄の在り方ともシンクロしていくかのようです。
 研究会が終わって、次のような便りが参加された先生から届きました。
 「やはり、アルテピアッツァの自然と環境が、あの雰囲気を創り出してくれたんですよね。緑と安田侃さんの彫刻の中をみんなが散策して…、みんな夢に描いてた通りの感じでした」「アルテピアッツァは心のふるさとになります。きっと」
 そしてかつて私が経験した研究会の中で最良のものであったことは言うまでもありません。
 2009年夏、アルテピアッツァ美唄でこれからの日本の美術教育に大きく貢献するであろう「美術による学び研究会」を開催できたことは北海道の教師としても誇りに思っています。大好きなアルテピアッツァ美唄に感謝!